赤いトゥインゴGTがユイレーシングスクールに来てから2年。我が家にはルーテシアRSとGD1フィットとNA8ロードスターがあるからトゥインゴGTはスクールの時にしか出番はないが、それでもオドメーターの数字は30,000キロに達した。
トゥインゴGT大活躍の数字
YRSルノー・トゥインゴGTは、受講生に試乗してもらったり、FRしか乗ったことのない人にFFを味わってもらったり、リードフォローのリードカーとして受講生を引っ張ったり、ドライビングポジションの説明に一役かったり、カメラカーとして車載映像を撮影したり、そしてなにより毎回重い機材を満載してスクールの準備にと大活躍している。
受講生の中にはルノートゥインゴを知らなかった人もいたから、ルノー・ジャポンの宣伝も担ったはずだ。
富士山を見にきたけど雲の中。刈り入れの終わった田んぼも物悲しい
トゥインゴGTは既に発売中止になってしまったけど、移動の道具としての価値が非常に高かっただけに残念ではある。GTに限らずトゥインゴがもっと繁殖していれば、日本の市場でもっとミニハッチの有用性を訴えることができたはず。
なにしろ、170キロ超でも乱れない直進性(サーキットでの話)、対角線に荷重移動が起きてもインリフトしないリジッドなボディとストローク十分な足(YRSオーバルでの話)、5速に入れたままズボラ運転ができる柔軟性(市街地と高速道路の話)。トゥインゴGTをそれこそ下駄代わりに使った身としては、ミニハッチとしては高めの価格設定だったとは言え、そのキャラクターをもっと大勢の人に知ってほしかった、とつくづく思う。
トゥインゴGTには赤が似合うと思うのは還暦を過ぎたから(笑)
クルマ離れが進んでいるとは聞くけど、個人的には車重1トンのボディに110馬力ぐらいののNAエンジンを搭載したような、自分で制御する楽しさを味わえるクルマが登場すれば、まだまだクルマ好きはほってはおかないと思うのだが。
FSWショートコースでのドライビングスクールで一緒にミーティング
今回もカメラカートして出動。YRSオーバルスクールの概要を知ってもらうために、半径22m直線60mのYRSオーバルFSWをインベタで、半径22m直線130mのYRSオーバルFSWロンガーを3速まで使ってアウトインアウトで走行して撮影した。
カメラカー その1
カメラカー その2
■ 撮影した動画がこれ
※ 次回のYRSオーバルスクールFSWは11月11日(日)開催。クルマを思い通りに動かすことに興味のある方はぜひご参加下さい。詳しくはユイレーシングスクールのYRSオーバルスクール案内頁をご覧下さい。
ユイレーシングスクールのスタッフの森田さんが新しいおもちゃを買った。乗ってみたかったので、無理を言って雨の中をYRSオーバルスクールに来てもらった。ホントはドライコンディションで乗りたかった、と言うと申し訳ないのだけれども、それでもルノー・スポールが市販したレーシングカーライクのスピダーの実力を垣間見ることはできた。森田さんに感謝。
トゥインゴGTと色使いが似てるかな
川が流れる路面を泳ぐ
広いトレッドは安定感抜群
車重が軽いからか姿勢変化はごくわずか
それでいてフロントタイヤのグリップを感じることができる
前後トレッドの和をホイールベースで割るとスピダーが1.3でトゥインゴGTが1.19
90キロプラスなのにディフューザーが効いているのが見える
リアビューはとてもグラマラス
とても市販車とは思えないポーズ
フロントのスペースフレームに落とし込むラッゲージパンを外した図
アルミ押し出し材のスペースフレームの奥に水平に配置されたコイルユニットが見える
アフターマーケット品なのかタコ足が魅力的なエンジンベイ。左右にプッシュロッド入力を受けるコイルユニットとドライバーが背中に背負うであろうラジエターが見える
4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションなのだがリアのそれはトレーリングアームに近い作動をする
ステアリングホイールはノンスタンダードだけどメーターは旧トゥインゴのそれ
FFのトゥインゴGTとミッドシップのスピダー
フランス車大好きの森田さんと
おしまい
11月5日。ユイレーシングスクールは初めて大きなサーキットでドライビングスクールを開催する。場所は鈴鹿サーキット国際レーシングコース。と言っても、今回使用するのは裏のストレートの中ほどにあるピットを使用する西コースを使う。
西コースのパドックでトゥインゴGT
クルマの運転をものにするためには反復練習が重要だ。確かにフルコースを走ればそれなりに楽しいことは間違いないのだが、1周6キロ近いコースを走るのでは限られた時間で全てのコーナーを繰り返し走ることがかなわない。そこで、今回は130R、デグナーコーナー、ヘアピン、スプーンカーブを集中的に練習するために西コースに限定した。
それでも、どんなクルマも最高速を経験できるであろう長いストレートや、トップギアからのコーナリングが求められる130R。複合コーナーの途中でシフトダウンしなければならないスプーンカーブなど、大きなサーキットならではの高速走行は体験できる。走行時間も1時間のインターバルを挟んで2時間もあるから、西コースのコーナーに関してはそれなりに納得がいくまでトライができるはずだ。
より高速コーナーの多い西コースをマスターしたら、次はリズムが大切な東コースでの開催を予定している。それぞれの経験を踏まえた上で鈴鹿サーキット国際レーシングコースのフルコースを走ろうというのがユイレーシングスクールが考える上達への道だ。
“高速サーキットを走る時の注意点”や“高速コーナーの攻め方”などのマニュアル、西コースコース図などの資料も既に完成しつつある。ルノー・トゥインゴGTで西コースを走った時の動画も公開した。当日の座学も含めて大きなサーキットを思いっきり走ってもらう準備をして、その上で、、ユイレーシングスクールの目標は初めての大きなサーキットでのドライビングスクールを1台のスピンもコースアウトもなく終えることにある。
■ 鈴鹿サーキット西コース
第6回で触れたように包丁はモノを切るために作られた道具だ。我々の周りには様々な道具があるが、道具にはそれぞれ作られた目的がある。
クルマと言えばもちろん、人を乗せて移動することを目的として作られた道具だ。
クルマは移動のために使われてこそ、初めて道具としての価値を持つ。それがA地点からB地点への移動であろうと、サーキットで速さを競う時も、重たい荷物を運ぶ時も、クルマを動かす目的は移動だ。
一方、クルマは道具なのだから目的に応じた使い方がある。使い方を『テーマ』という言葉で置き換えてもいい。
安全運転。これも大切なテーマのひとつだ。渋滞のきっかけにならないように時間的車間を意識して高速道路を走るのも立派なテーマだ。燃費を考えた運転もそうだろう。
クルマの運転にまつわるテーマを挙げればきりがないが、『同乗者が快適に感じる運転』なんていうのも見過ごせないテーマだ。実際、「ユイレーシングスクールに参加してから主人の運転がすごくスムーズになって隣に乗っていて不安がなくなりました」というメールをもらったことも一度ではない。
本題にもどろう。誰でも目的があってクルマを動かすのだろうが、その時にテーマを持って運転するとクルマという道具への理解が深まるという話だ。クルマのことをよく知ろうとするなら、クルマを使いこなしたいと思うならテーマを持って運転することが非常に重要になってくる。
例えばの話。それをやるかどうかはあくまでも個人の判断なのだが、パイロンで作られた丸いコースがあってそこを走る機会があったとする。単純なコースだから面白みに欠けるし走っても楽しくないかも知れない。
しかしユイレーシングスクールのYRSドライビングワークショップとYRSツーデースクールのカリキュラムにはこの『定常円旋回』が含まれる。
直径44mの真円に沿って15度おきに並べられたパイロンを前にして、初めて見た参加者はほとんど「ここを走るの?」という顔をする。だから、座学で「テーマはコンスタントにできるだけ高い速度で周回を続けることです」と念をおす。
ところが実際に参加者に走ってもらうと、これがうまくいかない。ある速度まではいいのだが、速く走ろうとするとアンダーステアが出てかえって速度が落ちてしまう。そこでインストラクターの走りを見てもらい、
・ステアリングを切りながら加速するとクルマはアンダーステアを発生する
・アンダーステアが出たら速度を落とすか舵角を減らさないと回復できない
・アンダーステアを出さないように前後輪のグリップバランスをとる。
ことを説明し、かつ「安全な場所なのですから積極的にクルマを動かしてみて下さい」と捕捉する。
■ これがインストラクターの走り
最終的には、ドアンダーだった人が軽度のアンダーステアに収まるようになり、スロットルをただ開けていた人が状況に合わせてコントロールするようになる。やり方を知れば、まず間違いなくどんな人もクルマを理想に近い形で動かすことができる。多くの場合、単純にやり方を知らなかっただけだ。テーマを持てばその対策を練るだろう。対策がわからなければ先輩に聞くのもよし、ドライビングスクールに参加するのもよし。大事なのは、その人がほんとにクルマという道具をきちんと使おうとしているかだ。
クルマの運転を練習する時、絶対的な速さが必要なのではない。50キロの速度でも直径44mのコースはクルマにとって動きにくい。動きたがらないクルマさんに動いてもらおうとする時、道具を使おうとする意識が芽生える。
あなたはどんなテーマを持って運転していますか?
■ YRSスプリント ロードスタークラス
ユイレーシングスクールが開催するYRSオーバルスクールやYRSドライビングワークショップでは「どなたでも、どんなクルマでも参加することができます」と呼びかけている。実際、過去にはワンボックスカーやSUVで参加された方や、65歳を過ぎた高齢の方、お父さんに連れられた免許取得年齢前の息子さんが参加されたこともあるのだが、それでもいまだに「サーキットを走った経験がないのですが受講できますか」とか「サーキットを10時間ぐらいしか走ったことがないのですが参加してもいいですか」という問い合わせがあるのも事実。
スクールの名称に『レーシング』という言葉が含まれているのが原因なのかも知れないが、スクールレース以外のカリキュラムには参加資格などない。ユイレーシングスクールとしてはできるだけ多くの人に受講してほしいというのが正直な気持ちなのだが。
運転が上手くなりたいとかサーキットを速く走りたいというようなことはまったくもって個人的なもので、人それぞれ差があるのが当然。しかし、ユイレーシングスクールとしては運転に興味を覚えた人がドライビングスクールに足を運んでくれるのだから、その人が納得のいくところまで上達する環境を用意することが務めだと思っている。だから免許とりたての人も楽しめるYRSオーバルスクールやYRSドライビングワークショップがあり、運転をとことん楽しみたいという人にスクールレースを用意している。
参加者の減少にともなって現在は開催していないが、YRSエンデューロやYRSスプリントレースのスクールレースも『もっと運転を極める』ことと『もっとクルマの運転をたのしむ』ために創ったカリキュラムだ。
昔、YRSドライビングスクールに参加した人に「レースをやってみませんか」と呼びかけると、ほとんどの人が尻ごみをしたものだった。しかし自分の経験からして、自動車レースに参加することほど運転技術はもちろん、クルマを操ることに対する意識を生長させられるものはないと確信しているから説得を続けた。
しだいに仲間が増えユイレーシングスクール卒業生を対象としたスクールレースを開催できるまでにいたった。今回紹介する富士スピードウエイショートコースで開催したYRSスプリントのロードスタークラスもそのひとつ。
2列縦隊のローリングスタートで始まるYRSスプリント。スリーワイドで1コーナーに飛び込むクルマを見て、富士スピードウエイのスタッフが「ぶつかる!」と叫んだのも、今となっては嬉しい思い出だ。他の走行会などでそのような状況になれば、まず間違いなく接触にいたっていただろうとのこと。ユイレーシングスクールの卒業生を誇らしく思ったものだ。
それが勝負である限り、勝とうと思って参加しても勝てるものではない。勝ためには、まず自ら勝てる状況を作らなくてはならない。それはどんなスポーツでも同じ。勝利という目的を明確にすることで技術はさらに磨かれる。意識レベルも上がる。
スクールレースなのだから『なんでもあり』で勝ちにいくことはみっともないことだ。相手を犠牲にして自分が優位に立つことが運転技術の証明ではない。だから、YRSのスクールレースではまず、スピンやコースアウトは見られない。そこにあるのは、参加した全員が共有する透明でピーンと張りつめた時間だけだ。スポーツである限り、勝負にも秩序がなければならないし、混乱してもまず最初に秩序を保とうとする意識が働かなければ勝負に勝つことはできない。スクールレース参加者全員で、「これぞモータースポーツ」という作品を創りたい。ユイレーシングスクールの思想だ。
オリンピックが終わった。一流のアスリートの勝負に感動しながら、しかし、それは少しばかり辛い時間でもあった。
モータースポーツの頂点であるF1では小林選手がひとり頑張っているが、彼に続くドライバーが現れない。彼を支援する企業も現れない。今に始まったことではないけれど、世界有数の自動車生産国でありながら、クルマの使い手に話を限れば、現状は悲惨だ。
オリンピック種目はどれも広大なすそ野に支えられたスポーツばかり。しかも、それぞれの観客の多くをそのスポーツの経験者が占める。だからスポーツに自分を投影できる。当事者意識も増すから競技にのめり込める。日本でもモータースポーツに興味のある人は少なくないが、残念ながら彼らが経験者である確率は極めて低い。
個人的には自動車レースをオリンピック競技にすることには反対だが、この先、日本のモータースポーツの参加人口が増えることによって社会的認知度が上り、日本人ドライバーが世界に伍して脚光をあびる日が来ることを願い続けた2週間だった。
YRSオーバルレースを開催しているYRSトライオーバルは、実は広い駐車場にパイロンを並べて作ったコース。ユイレーシングスクールでは半径22mの半円を130mの直線で結んだYRSオーバルFSWロンガーを使ってきたのだが、コーナーをひとつ加えることにより新たな環境で走ってもらうことにした。
YRSトライオーバルはこんな感じ
片側の直線の中間点を外側に28.5m移動させたところを3つ目のコーナー(短いコーナーなのでユイレーシングスクールではキンクと呼んでいる)の頂点とし、高速コーナーでもあるのでキンクだけコース幅を18mにした(他は14m)。
ひとつコーナーが増えただけでふたつあった元々のコーナーは、ひとつがディクリーシングラジアス、もうひとつがインクリーシングラジアスになるので、ドライバーは3種類のコーナーに合わせた走り方を求められる。
YRSオーバルレースの合間にトゥインゴGTでYRSトライオーバルを走ってみた。
ロガーに記録された走行データがこちら
【動画】トゥインゴGT、YRSトライオーバルを走る
みなさんも1周20秒のYRSトライオーバルを走ってみませんか?運転が楽しくなること請け合いです。
※ロガーデータはYRSオーバルレースと同じ右回り、動画は本場アメリカに倣って左回りです。ご了承下さい。
YRSエンデューロのルマン式スタート
それが直接的であれ間接的であれ、今ほどモータースポーツに関わっていない自動車メーカーを探すことが難しい時代はない。モータースポーツが危険であるという理由で自動車メーカーが自動車競走と距離をおいていた時代を知る者にとっては隔世の感がある。
自動車メーカーがモータースポーツに参画する理由はいろいろあるのだろうけど、F1を初めWEC、WSC、WTCC、WRC等の世界選手権はもとより、各国で行われている国内選手権にもいわゆるワークスチームが参戦している。独自のモータースポーツを育んで来たアメリカですら世界選手権レベルの活動を展開している。
インターネットの普及で世界が狭くなったからなのだろうか。60年代、70年代に比べて自動車技術が発達しモータースポーツの危険性が低まったからなのだろうか。はてまた、モータースポーツシーンに顔を出さなければ自動車メーカーとして生き残れない時代になったということなのだろうか。
いずれにしろ、中学生の時に第2回日本GPを見てからというもの、モータースポーツしか眼中になかった人間にとっては嬉しいことだ。クルマ好きにとって、そしてクルマは「使ってナンボ」だと思っている人間にとって、クルマを操ることに長けている人々の走りを見られることは幸せだ。
130分先のゴールを目指す
しかし残念なこともある。日本におけるモータースポーツの社会的認知度が極端に低いことだ。30余年前アメリカに渡る前から印刷媒体でその現実を訴えてきたのだが、我が国のモータースポーツは独自の発展をとげたせいでいまだに他の国ほど、他のボールゲームのようにモータースポーツが扱われることはない。
理由はいくつかあるだろう。モータースポーツを統括する権能が日本にはひとつしかなかったこと。その権能が公認したレース以外の開催を認めなかったこと(非公認レースが公に開催できるようになったのはつい10年ほど前のことだ!)もそのひとつだろう。
日本のモータースポーツが自動車メーカーの主導、そして支えなしになりたたなかったことも理由だろう。
スピードを出すことが危険につながると喧伝してきた交通行政にも触れる必要があるかもしれない。
YRSオーバルレースは本場と異なり雨でも開催する
しかし最たるものは、モータースポーツを構成するピラミッドが小さかっただけではなく、その裾野が圧倒的に小さかったことだ。
他のスポーツならば、観戦する人間がかなりの割合でそのスポーツの経験者である可能性がある。だから自分の身に置き換えながらプロの技を見ることができる。ところが、見る側が経験者でなく傍観者でしかなければ、プロのスポーツもたんなる憧れで終わってしまう可能性がたかい。
クルマはクルマなりに操ればちゃんと動いてくれる
今年50周年を迎える鈴鹿サーキット。日本のモータースポーツが歩んできた道が間違っていたとは露にも思わないが、これからのことを思うとまだやりたいことが山ほどある。そこでユイレーシングスクールが歩いてきた道を振り返ってみた。少しでも多くの人にモータースポーツの醍醐味を味わってもらいたくて、現在モータースポーツを楽しんでいる卒業生に説いてきたYRS流モータースポーツの楽しみ方の数々を当時のメモを元に披露したいと思う。あなたがどう思うかは別にして。
※長文なのをご了承下さい。
※最後にYRSスプリントの動画を掲載してあります。
※順不同です。
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・他のスポーツでは昂揚感を求めるのに一流のアスリートを目指さなければなりません。そのためには莫大な時間と努力が必要です。身体能力が低ければ本当の醍醐味を味わえないからです。しかしモータースポーツはアマチュアでもその領域に達することができます。モータースポーツはクルマを動かす技術を争うのが本来の姿で、他人と競争するわけではありません。クルマを思い通りに動かすことができれば、例え身体能力に劣っていてもライバルと争うことができます。それがボクがモータースポーツをみんなに勧める理由です。
・クルマの運転は芸術です。速さを求めると同時にたくさんのことを高いレベルでこなさなければなりません。モータースポーツに参加する時は単純に速さを求めるのではなく、アーティストになることを目標にして下さい。
・サーキットは対向車が来ない、歩行者が歩いていないなど一般の道路とは異なる環境にあります。ここにひとつの落とし穴があります。あなたは無意識のうちにサーキットは自由に走れるところだと決めてかかっていませんか。サーキットを走るということは決して自由ではないのです。つまりクルマの限界を超えた自由は存在しない、自由に走りたいのであれば自分とクルマの限界を越してはならないということです。
・日本では、どこもかしこも速さ、速さ、速さ。実体のない絶対的な速さをやみくもに求める風潮が蔓延しています。もう少しカーコントロールに目を向けて その人なりの速さを探してもいい時期に来ていると思います。
・サーキット走行をしているのにレースに誘うと怖いからと尻ごみする人がいます。人と一緒に走るのが怖いという人がサーキットで限界を超えて走っています。それが安全だとはどうしても思えません。
・モータースポーツは善意で成り立っています。クルマの運転自体が危険をはらんでいるわけですから、他人と競争するとなればそれなりの意識が必要です。「自分ならこうしてほしい」と思うことを他人にもしてあげられる余裕を持って下さい。
・モータースポーツにも規則がありますが、実は不公平なスポーツなんです。速さを決める要素が多すぎてイコールコンディションはまず期待できません。ですから結果を求めるよりプロセスを楽しむことを優先してみて下さい。
・我々はプロを目指しているわけではないのですから、サーキット走行もモータースポーツも財産や身の危険を冒してまでやるべきものではありません。結果に満足できなくてもそれがご自身の実力です。でも悲観することはありません。結果はあなたの運転技術に対して出されたもので、決してあなたがダメ出しされたわけではないのです。クルマをうまく動かずことができるようになればすむことなんです。
・地面に書いた幅10Cmの白線があります。「その上を踏み外さないでできるだけ速く歩いて下さい」と言われたら誰でもやって見るでしょう。しかし「地上10mのところにある幅10Cmの平均台をできるだけ速く渡って下さい」と言われたら、いったい何人の人が「イイヨ」と言って気軽に渡ることができるでしょうか?サーキットを走るのもそうです。レースに出るのもそうです。その時に自分が何に直面しているかということを自覚することが大切です。
・サーキット走行では日常でできることができない。 日常で培った知識と経験を生かすことができない。しかしやることは日常と同じ。だから錯覚が起きるのも当然です。思い違いをするあまり自らを危険にさらことがあります。そんなサーキット走行が楽しいわけがないじゃないですか。日常をサーキットに持ち込むのは危険です。非日常を意識する練習をしてみて下さい。
・整備不良でオイル漏れを起こした車両が燃えてしまったことがあります。無茶苦茶な運転でスピンやコースアウトが後を絶たないのも事実です。日本のモー タースポーツには手軽さが必要ですし少しずつ垣根は低くなってきているようですが、逆に「手軽さ」を「気軽さ」とはき違えている人が増えているのが心配です。
・日本では猫も杓子もタイム、タイムとかまびすしいですね。タイムなんてクルマをちゃんと操れれば結果としてついてくるもんです。順序が違うんですよ、日本は。よっぽど自分に自身がないんでしょう。タイムという記録がないと安心できないのかも知れないですね。サーキットのタイムなんてお金をかければ多少運転が下手でも手に入るもの。そんな自分(人間)が介在しない結果 なんかを自分のよりどころにするのは幼稚です。
・最も大切なのはスピンやコースアウトをせずに安全に走行を終えることです。 ほとんどの場合サーキットを走る時は他人も走っています。あなたのスピンが原因で、あるいはあなたのクルマの故障が原因で走行時間がなくなってしまったら。ひとりよがりは駄目です。そういう人に限って運転も自分本位でクルマのおいしいところをなかなか使えていないものです。
・なぜ我々アマチュアがレースに出たほうが良いのか。日ごろ社会生活になじんでいると、自分とまじめに向き合う機会はほとんどありません。しかし個人の身体能力より運転技術が勝つための要因になるレースに出れば、かなりの極限状態で自分と対峙する機会が持てます。結果は別にして、その時あなたがどうふるまうのかを確認するだけでもレースに出る価値はあります。
・自分の意識と自分の速さを認識した人は、間違いなく安全に走ることができます。あとはどんな状況でもその認識を持ち続けるこ とができるかどうかだけです。
・モータースポーツの危険、否、クルマの運転がはらむ危険のほとんどは人間の意識で回避できます。そしてレースの安全を確保するために参加者の意識統一が欠かせません。施設やクルマの装備を充実するだけで安全が保てるものではありません。自分の意識で安全を確保する努力をして下さい。
・「Do not anticipate, do react ! 」憶測でクルマを動かすのはダメです。クルマの動きを感じてそれに合わせて操作して下さい。レースでもそうです。だろう、で競争するのは危険です。他人の動きに反応できる余裕を残しておいて下さい。
・レースに出るのですから勝ちたい気持ちはわかります。ですが、YRSのレースでは勝ちを狙って走るよりも、「もうあの人とは一緒にレースしたくない!」と思われないようなレース運びを目標にして下さい。
YRSエンデューロやYRSスプリントを開催していた富士スピードウエイショートコース
【動画】YRSスプリント@富士スピードウエイショートコース
どこにでもいる青年とオジさんがヨーイドン !
アメリカに拠点を構えて活動していた時に調べたのでいささか古い数字ですが、98年当時アメリカには1,320ヶ所のレース場がありました。
その内の78%がオーバルコース。ロードコースがあたりまえの日本やヨーロッパでは考えにくいことかも知れませんが、アメリカではレース場の8割が楕円形、もしくはおむすび型のオーバルコースです。有名なデイトナスピードウエイやシャーロットスピードウエイなどはおむすび型のいわゆるトライオーバル。マイアミレースウエイなど純粋な楕円形のオーバルコースは全長2キロ以上のオーバルコースでは少数派です。
先ごろインディ500が行われたインディアナポリスレースウエイは明確なコーナーが4つあるレキュタンギュラーオーバルと呼ばれ、マイアミレースウエイが形状を変えたことで今やアメリカ唯一の存在です。
8割がオーバルコースだとするとロードコースはどのくらいかという話になりますが、オーバルコースに次いで多いのがドラッグレースを開催するドラッグストリップで18.3%。ロードコースは全1,320ヶ所のレース場のうちの3.7%、49ヶ所にしか過ぎません。
ですが、このことがMLBやNBAやNFLをしのぐ人気となったアメリカのモータースポーツの原動力でもあるのです。というもの、オーバルコースでは全1,029ヶ所の内の96.1%が全長800メートル以下のアマチュアがレースをするためのコースで、毎週土曜日の夜にはなにがしかのサタデーナイトレースが開催されています。ドラッグストリップにしても全242ヶ所の内の46.7%が全長8分の1マイル(200m強)でアマチュアがサンデーレースを楽しむための施設です。
見せるレースは徹底的にプロフェッショナルに、一方で敷居の低い参加できるモータースポーツがそこいら中にあるアメリカだから、インディ500に40万人の人が集まる環境ができたと言えます。
時間が経っているので数字に変化はあるでしょうが、その後閉鎖になったレース場がある一方で新しいレース場ができたというニュースも入ってきているので、アメリカのモータースポーツをとりまく環境にそれほどの違いはないと思います。
と、前置きがながくなりましたが、ユイレーシングスクールでは卒業生のためにスクールレースを開催していますが、YRSオーバルレースは日本で最も敷居が低いモータースポーツだと自負しています。そのYRSオーバルレースを初めてトライオーバルで開催しました。
半径22mの半円を130mの直線でむすんだオーバルコースのストレートのひとつに緩いコーナーを加えただけなのですが、これが走る方にも見る方にも面白いのなんのって。コース全長が延びているのにも関わらず、ラップタイムはむしろ速くなっていて、いかに加速と減速の時間が速さに関係しているかを証明することにもなりました。
ぜひご覧下さい。
参考:YRSスクラップブック-アメリカンレースウエイ
小柄なトゥインゴGTよりさらに小さいかわいらしいミニ達
4月のYゼミにはIさんとTさんが参加。おふたりとも関西でミニのレースに参加している。
ビデオを見たり図を描いて説明したり、とにかく疑問を解決
実はIさん、3月のYRSツーデースクールに来てくれたのでユイレーシングスクールは2度目の参加。YRSの合理的なカリキュラムが気に入ったとのことで、今回は友人のTさんを誘って参加してくれた。
そのIさん。YRSリトリートに到着するやいなや、「本当はYRSのことTさんには教えたくなかったんですが・・・」。そうなんです。YRS卒業生に「お知り合いを誘って下さい」とお願いしても、「YRSで習ったことは自分だけのものにしておきたいからなぁ」という反営業的な声が圧倒的(!)なのも嬉しいやら残念やら。
Tさんの94年式ローバーミニ
今回はおふたりだけだったので時間は十分。おふたりともレースで好成績を残すことが目的なので、サーキットを効果的に攻略する方法やレースで競り合いになった時に優位に立つ方法を伝授。5月中にレースがあるとのことだから、期待して結果を待ちたい。
Iさんの81年式BMCミニバン
夕食をはさんで夜9時すぎまで続いたYゼミ。合間にトゥインゴGTでドライブ。リアシートからIさんとTさんの運転を覗かせてもらった。おふたりとも運転には全く問題ないのだけれども、トランジッションが不足気味なのと操作がどちらかと言うとオンオフ的な傾向があったのでこれもアドバイス。トゥインゴGTはオーバーハングが短い割には姿勢変化が大きく荷重の移動を体感しやすい。
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ユイレーシングスクールは5月20日にYRSドライビングワークショップFSWを開催します。クルマの運転の基本を確認するためのカリキュラムです。クルマの動かし方に興味のある方はぜひ参加して下さい。トゥインゴGTもお待ちしています。
5月20日YRSドライビングワークショップ案内頁&申し込みフォーム
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものの5時間34分です。
YRS座学オンCD案内頁
今年は湖西の桜は開花が遅れた。富士スピードウエイ近辺より遅いほど。
桜が散り始めたというのに富士山は裾野まで雪化粧。
ユイレーシングスクールでは独自のドライビングスクールの他に、カークラブや個人からの依頼でオーダーメードのカリキュラムも実施しています。今回の受講者はポルシェクラブ千葉の面々。これで7回目の開催。
クルマの性能を最大限に引き出そう! を合言葉に集まったのは14名のクラブ員と以下のクルマ。
991カレラS
997GT3-RS 4.0L
997GT3-RS
997GT-3
997GT-3
997カレラS
997カレラS
997カレラS
997カレラS
997カレラS
996GT-3
964カップカー
ボクスターS
ボクスター
舞台は富士スピードウエイのYRSオーバルロンガー。最終的に全員が130mの短いストレートでスロットルを床まで踏み抜き、幅14mのコースを目いっぱい使ったコーナリングを堪能。ポルシェという機械がいかに走ることを大切に作られているかを実感。
ふだんなら997GT3-RS 4.0Lのリアタイヤにスリップアングルをつけるなんていう芸当はできないしヒンシュクものだけれど、この日ばかりはクルマの性能と人間の限界に挑戦した。
走行の合間に記念撮影
YOSSTを取り付けたトゥインゴGTも活躍
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ユイレーシングスクールでは以下のドライビングスクール、スクールレースを開催します。クルマの使い方に興味のある方は参加してみませんか?トゥインゴGTもお待ちしています。(詳細は以下の案内頁をご覧下さい。)
○ YRSオーバルスクールFSWロンガー
○ YRSドライビングワークショップFSW
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●クルマはよくできた道具なので、性能を発揮させるためにはそれなりの使い方を知る必要があります。ユイレーシングスクールが10周年を記念して制作したCDを聞いてみて下さい。バックグラウンドミュージックもないナレーションだけのCDですが、クルマを思い通りに動かすためのアドバイスが盛りだくさん。クルマ好きにとっては一生ものです。
YRS座学オンCD案内頁:http://www.avoc.com/cd/