トム ヨシダブログ


第170回 プレシーズンセール開催

今回はまんまユイレーシングスクールの宣伝です。

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ユイレーシングスクールは実際のスクールで理にかなった運転がどういうものなのかお伝えしていますが、それ以外にもいろいろなコンテンツを用意しています。今回紹介するYRS座学オンCDもそのひとつです。

桶川スポーツランドで初めてのスクールを開催してから筑波サーキット、浅間台スポーツランド、成田スポーツランドと活動の輪を広げ、富士スピードウエイ、鈴鹿サーキットでも開催、最近では和歌山や三重や徳島でもドライビングスクールを開催しました。

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しかしながら「九州ではやらないのですか?」とか「筑波は遠いのですが」といったメールをいただくこともあり、なんとかドライビングスクールに来るのが難しい方々にも理にかなった運転のいろはをお伝えできないか、と考えたあげくに作ったのが今回紹介するYRS座学オンCDです。
で、実際のスクールに来れない方にも同等の情報を提供したいと思っていたら、最終的には音声だけの5時間30分のCDになってしまいました。

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ですが収録されている内容はクルマの運転に役に立つことばかりです。運転技術に後退はありません。学ぼうとする限り向上していきます。将来のため、明日のために聞いてみてはいかがですか。

そのYRS座学オンCDのプリシーズンセールを行ないます。以下の申し込みフォームに記入の上で送信。3日以内に料金をお支払い下さい。

プレシーズンセール期間:2016年1月4日(月)から9日(土)
価格:通常送料込み4,500円のところ3,990円(消費税込み)
発送:セール期間に申し込まれた全数を14日(木)にクロネコネコポスでお送りします。

※ 振込先:ジャパンネットバンク スズメ支店(002) 普通預金 2047309 有限会社ユイレーシングスクール

・YRS 座学オンCD 購入申込みフォーム

参考のために収録されている音声の一部を聞くことができます。数字をクリックすると再生が始まります。

[6] 道具を使う
[11] アンダーステアとは
[12] オーバーステアとは
[32] こんなことがありました
[42] 運転の決まり
[49] ドライビングポジション
[53] 試してみましょう
[59] こんなことがありました
[63] 加速の意味

行頭の数字がテーマです。テーマは全部で124あります。全てのテーマをご覧になりたい方はYRS座学オンCDのさわりをご覧下さい。


※ YRS座学オンCDはmp3フォーマットで録音しています


第166回 ルノー・スポール スペシャリストディーラー研修

ずっと晴天がつづいていたのに、『よりによって雨だよ』となった11月9、10日。筑波サーキットで行なわれたルノー・ジャポンのルノー・スポール スペシャリスト ディーラー研修会にインストラクターとして参加した。
昨年11月のFSWでの研修に続いて2回目。「販売する人にも、クルマの面倒を見る人にももっと運転を楽しんでほしいから」とは、ルノー・ジャポンのTさん。それでユイレーシングスクールのカリキュラムを体験してもらうことになった。いわばルノー版YRSツーデースクール。

全国からルノー・スポールのスペシャリストとテクニシャン41名が筑波に集合。1日目はジムカーナ場にパイロンで作ったオーバルコースでコーナリングの練習。「あと5キロ高い速度でターンインして下さいねぇ」、「ブレーキをあとパイロン1本分引きずってぇ」、「速度を落としすぎるとクルマがロールしませんよぉ」と次から次へと愛のムチ(笑)でせかされながら、全員無事にカリキュラムを終了。

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夕方になって雨がポツポツ。真っ暗な中でコース2000の照明とヘッドライトだけを頼りに走る、走る。
滑るからクルマがよく曲がる! 面白い、面白い。

前回は日程の関係で1日目にショートコースを走り2日目にオーバルコースを走ることになったのだけど、今回はYRSらしく2日目がサーキット走行でコース1000へ。2回目ということもあるのだろうけど、リードフォローで遅れると指差されたこともあるのだろうけど、オーバル練習の効果てきめんでウエットなのにも関わらず全員がスロットルペダルを床まで踏んでいた。朝から雨で憂鬱そうな顔はどこへやら、走り終えればみんな笑顔。

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全員がコース1000を走るのが初めて。スタッフの先導でリードフォロー。遅れると指差されるは、腕をグルグル回してあおられるは、路面は濡れているは。それは、それは楽しい時間でした。

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雨は1時的にやんでもまた降り出す。降っている時間のほうが長い。走り始める頃には池はなくなったのが幸いと言えば幸い。

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コースに慣れたところで、次は

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ルーテシアRSトロフィーに乗ります。

クルマを購入する人に最も近い位置にいるみなさんが腕をあげていくのを見るのはとても、とても嬉しい。今回参加されたみなさんもそれなりに楽しめたと思う。もっと楽しむことに貪欲になってほしいし、その楽しさをもっと広めてほしいと思う。所有欲から使用欲への転換。ユイレーシングスクールが目指すところです。

クルマはただ移動に使うだけではその価値がわかりません。運転を楽しもうとすると見えてくるものがあります。

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参加されたみなさんの順応性は高いから、もっと楽しもうと思うともっと高くなる。





【スペシャリストディーラー研修に参加されたみなさんへ】
最近、クルマを買った方にユイレーシングスクールを勧めてくれるポルシェのディーラーがあります。勧めに乗って受講したその方、クルマの魅力を再発見。大喜びでした。
ユイレーシングスクールの宣伝をするつもりは、あるんですけど、カングーでもキャプチャーでもタイヤが4本ついていれば、基本同じです。よろしくお願いします。


第162回 ルーテシアRS走る 2

レースに参加したいと思っている人も応援したいからレーシングスクールと名乗っているけれど、基本は安全にクルマを動かすための知識と操作の手順を提供することがユイレーシングスクールの目的。
だから、走って気持ちのいいサーキットではなくて、あえて広場にパイロンでコースを設定し、1周にかかる時間を短くして反復練習をしてもらっている。

運転操作には再現性が重要だから、単位時間あたりの移動距離が長いサーキットでは操作とクルマの挙動の因果関係を検証しながら修正し続けることが難しい、という理由もある。

ユイレーシングスクールでは近年、3種類のパイロンコースを使っている。ひとつが前回紹介したYRSオーバルロンガー。今回紹介するのがYRSトライオーバル。ヘアピン、3速全開のコーナー、回り込んだディクリーシングラジアスのコーナー。3種類の異なる特性のコーナーを「できるだけ速く」をテーマに繰り返し走ると、運転操作でやってはいけないことと、やるべきことと、やったほうがいいことの仕分けが進む。

初めてYRSトライオーバルを走る受講者に、事前に送って予習をしてもらうためのビデオがこれ。

臨機応変に対応できる運転を目指したい方は、YRSトライオーバルを体験することをお勧めします。


第161回 ルーテシアRS 走る

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1周20秒の間に2回も、加速減速旋回の練習ができるYRSオーバルロンガー。半径22m、直線130m、幅員14.1mのパイロンで作ったコースは、YRSオーバルスクールとYRSドライビングワークショップとYRSツーデースクールで体験することができる。

とてつもないエネルギーを抱えるクルマの方向を変えるということは、クルマにとってはストレスを溜め込むことに他ならず、もちろん人間にとっても難しい作業だ。けれどクルマの性能は我々が想像するよりはるかに高いから、クルマが求める操作の手順を覚えてしまえば、クルマが自動的に曲がってくれるようになる。だから自動車。

オーバースピードでコーナーに入ってもアンダーステアが顔を出すでもなく、リアタイヤをうまく使うことができれば十二分に速い速度でコーナリングすることができる。
※だから、結局のところ速度を控え目に走った場合には、安全性がグッと高まるという理屈だ。

ユイレーシングスクールでは単純なレイアウトだけど、否、だからこそ奥の深いオーバルコースでの練習を積極的に取り入れている。
ルーテシアRS シャーシスポールの懐の深い足は、手順さえあっていれば無類のロードホールディングを発揮してくれる。

そんなシーンをイメージしてもらおうと作ったのがこのビデオ。途中からスローモーションになって、最後にはアップになるのでぜひご覧いただきたい。

過去に掲載したYRSオーバルロンガーに関する記事もある。こちらも目を通していただければと思う。
・YRSオーバルロンガーを走る
・YRSオーバルロンガーを裸にする
安全に快適にクルマを走らせたい方は、一度YRSオーバルロンガーを体験することをお勧めします。


第155回 交通統計

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※写真は本文と関係ありません

交通事故総合分析センターという公益財団法人(ITARDA)がある。道路交通法に基づいて国家公安委員会から認定され、交通に関する各種の統計を、警察庁を初め中央、地方の行政機関を横断して収集できる立場にある。
その広範にわたる数字を元に、ITARDAでは毎年夏前に前年度の数字を加えた交通統計という資料を発行している。

日本でユイレーシングスクールを初めて間もない頃、あるきっかけで交通事故の実態を知りたいと思いこの交通統計にたどりつき、それからは毎年入手してユイレーシングスクール独自のデータを作成しいる。

「あるきっかけ」についてはまたの機会にゆずるとして、今回はいくつかの数字を見てほしいと思う。

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※写真は本文と関係ありません

昨年度の数字。日本には8,200万人の運転免許保有者がいる。クルマ離れがニュースになるご時勢なのに保有者の数は増え続けている。
統計では4輪と2輪を合わせた、しかも自家用営業用の区別なく、大型特殊車まで含んだ数字を自動車保有台数としているのだが、それによれば国内で9,100万台の車両が走っている。こちらも毎年増加している。
想像できないくらい大きな規模の交通というものが存在していることがわかる。ボク自身が8,200万分の1であって、9,100万分の3の車両を所有していることになるのだが、現実味は薄い。それほどクルマが普及していることになり、運転が日常生活の一部になりきっていることになる。

しかし、クルマは便利で有益で楽しい乗り物であるはずなのだけれど、統計をひもとくと少しばかり残念な数字が目に止まる。
ひと頃より、「速度を出させない」施策が、いいかどうかは別にして、功を奏しているのだろう、交通事故の総数は減少傾向にある。死にいたる事故の件数も減ってきている。もっともわが国は24時間死者しかカウントしていないから、ひょっとすると交通事故が原因で亡くなった方の数字はもっと大きいかも知れない。

それはそれとして、ユイレーシングスクールが注目しているのは単独事故の件数とそれによる死者数だ。

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交通事故総件数に占める単独事故の割合

統計では事故を車両対車両、車両対人、車両単独の3つに分類している。前ふたつは相手があっての事故だけれど、車両単独の事故は、多分間違いなく、運転している本人が避けようとすれば、或いは事故を防ごうとすれば防げた事故であるはずだ。

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※写真は本文と関係ありません

そして、交通事故そのものが減ってきている中で単独事故の件数も減少しているのだが、交通事故の原因を死者数から眺めると驚くべき数字が割り出される。

昨年度に起きた交通事故のうち3%強が単独事故だけど、死亡事故に限って見ると24%が単独事故が原因、という事実。
例えが適切ではないかも知れないが、『100件の交通事故のうち単独事故は4件未満に過ぎないのに、交通事故によって亡くなられた方の4人に1人が、避けようとすれば避けられた、あるいは避ける方法を知っていれば避けられたであろう単独事故が原因で亡くなっています』ということだ。

日本の交通全体の分母がとんでもなく大きいから、自分のこととして捉えるの無理だとは思うけど、クルマを運転している人が事故を起こす可能性は決してゼロではない。
しかも、いったん単独事故が起こすと死にいたる可能性が高い、ということを、クルマを運転する人全てが意識しておいたほうがいいと思う。いささか暗澹たる気持ちでデータを更新するたび、厳に自分も戒めることにしている。

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類型別単独事故原因

詳細までは分からないが、交通統計には単独事故の原因も載っている。これは勝手な想像だけど、もう少し集中して運転して、もう少し的確に状況を判断できて、もう少しクルマの運転操作に長けていたら、と思わざるを得ない数字ではある。


第151回 人の速さとクルマの速さ

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YRSストリートの一番奥のコーナーを抜けると富士山がお出迎え

ドライビングスクールを続けているとたくさんの嬉しいことや楽しいことに出会う。毎回なにかしら心に残るシーンがあるものだけど、先日のYRSドライビングワークアウトでもそんな時間があった。

サーキットでなくても同時に複数のクルマが走るユイレーシングスクールのオーバルスクールやドライビングワークアウトでは、時として追いかけっこが始ることがある。競争するのがドライビングスクールの目的ではないけれど、一方では運転が上手くなっていく過程で他人と競うことが大切な場合もある。

今回追いかけっこをしていたのはこのふたりだけではなかったけれど、ブログに登場してもらうのはポルシェ911に乗るNさんとBRZに乗るKさん。
ふたりともユイレーシングスクールに足しげく通ってくれるいわば常連。二人とも思うところがあってYRSドライビングワークアウトに参加してくれた。

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1速に落としたくなるようなヘアピンを我慢してストレートの速さにつなげる
※写真は慣熟走行

YRSドライビングワークアウトを開催するのは広大な駐車場に作った1周840メートルの俗称YRSストリート。昨年の春、夜な夜な水割りを片手に考えに考え抜いた【ここをマスターしたら運転が上手くなる】というレイアウト。

1日の始まりは何のアドバイスもなしに参加者にコースを走ってもらうのだけど、初めての人はストレートを下って行くと正面に立ちふさがるガードレールに驚く。3速からフルブレーキングで2速に落とし、このコースで最もタイムをかせげるキンクに続く大事な「下のコーナー」を回る時、いやでも目に入るのだから。

それでも、たっぷりと時間をとったスレッショールドブレーキングの練習が終わるとガードレールが不安ではなくなって、参加者は徐々にペースを上げていく。ブレーキングのコツを覚えるとイニシャルで瞬時に速度を落とすことができるようになるから、真っ直ぐ行ってしまうような可能性は限りなくゼロになる。

以前に走ったことのあるNさんとKさんは日常からのリセットが終わると41秒前後で周回。YRSドライビングワークアウトでは5分程度のセッションを何回も繰り返すのだが、同じグループになったNさんとKさんは、やがてテールツーノーズで走り始めた。

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下のコーナーでテールツーノーズのNさんとKさん

直線での加速に勝るNさんと軽さが生きるコーナーが速いKさん。Nさんが前でKさんが後というパターンでセッションが続く。Kさんは「下のコーナー」のブレーキングでNさんに近づこうとするが、なかなかNさんと同じような立ち上がりができない。結局、ツイスティなセクションで間合いをつめ、再び「下のコーナー」でNさんに挑むという膠着状態が数セッション。

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ストレート駆け下ってブレーキングからターンイン
その瞬間、瞬間のお互いの気持ちが手にとるようにわかるのが嬉しい

そこであるセッションが終わったところでKさんに耳打ち。『あのね、「下のコーナー」のブレーキング。今はこうなっているけど、実際はムニョムニョしているから次はこうしてみたら』。

次のセッション。何度かトライしたKさんはムニョムニョを克服。「下のコーナー」を抜けて2速から3速に上げるころにはパワーの差が現れるけど、コーナーの立ち上がりではNさんのテールにしっかりと貼りつけるようになった。

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車間に惑わされないためにも相対的速さを理解できる感性が重要

何をアドバイスしたかというと、人間が考える速さとクルマの速さが必ずしも一致しないということ。運転しながらこの区別ができるかどうかが肝心だ、という話をした。ある現象をだけをとらえて近づいたと思っても、それはあくまでも人間から見ているだけで、クルマから見れば『その操作では近づくことはできませんよ』と言っているかも知れない。

今回の例では、ブレーキングで速さに勝るNさんに近ずくことを見つけたKさんは、できる限りブレーキングを遅らせてさらにNさんに近ずく努力を続けた。しかしそれを続けていても、加速性能はNさんのほうがいいのだから、それ以上局面が変わるわけはなかった。

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1000分の1まで計測できるYRSオリジナルの計測装置
運転中の耳に毎周のラップタイムが届く
タイムが伸びないと「起きて下さい」の声も

これは今回のNさんとKさんにに限らず、JAFの公認レースでも頻繁に見られる考え違い。

ブレーキングで前のクルマに近づく。思いの外に近づく。それを自分の手柄だと勘違いするから、さらにブレーキングを我慢する。我慢した結果、間合いを詰められて、かつ前のクルマと同じように立ち上がれるかと言うと、そんな保障はどこにもない。
3速全開の時に「ある車間」で走っていたとする。ブレーキングして2速に落とした時点で、単位時間あたりの移動量が減るわけだから、自ずと前のクルマとの距離は「ある車間」よりずっと短くなる。車速が変化すれば車間も変化する道理なのだけど、運転していると絶対的な速さに夢中になっているから、近づくと『ヤッター』となって、次にはもっとやってやろうとなってしまう。
本当にブレーキングが上手ければ、頑張らなくても、多少の性能差があっても前のクルマについていけるはずなのに。誰かを追いかけている時、相手に近づくのが自分のブレーキングが上手いせいなのか、それとも単に速度が落ちたからなのか見極められなければもったいない。

頑張ってそれなりの効果のようなものが現れると安心して、その先のことまで頭が回らなくなるのが人間の生理。ある意味でしかたのないことかもしれないけど、その状況を打破する工夫が次のステップにつながる。それがユイレーシングスクールがレースを勧め、ライセンスもいらない手軽なスクールレースを開催している理由でもある。

で、こうしたらとアドバイスをしてKさんがやってみたら、それまでとは全く違う展開になったという話。Kさんは宿敵ポルシェに届かんとする走りに、たいそう喜んでいた。

Nさんの名誉のために付け加えておくと、動力性能に大きな開きがあるのに同じような速さで走っていたのはNさんのせいではない。
ポルシェのように動力性能の高いクルマはそれなりのデザインがなされている。タイヤが太いのもその性能を生かすためだ。しかしながら、どんな場合でもその性能を発揮できるとは限らない。特にYRSストリートのようないやらしいコースだと、太いタイヤが走行抵抗となり、BRZより重い車重もコーナリングスピードを殺ぐから、その性能を生かせる区間が短くなる。どんなクルマでも40秒を切れれば95点、というレイアウトにしたのだから、ポルシェはポルシェ、ロードスターはロードスターなりに、それぞれコースに合わせてそれなりの走り方を構築する必要がある。

速い人は、ポルシェ乗りも39秒、ロードスター乗りも39秒で走ることができる、YRSストリートとはそんなコース。

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YRSではどんなクルマでも同乗走行で性能を引き出すコツをアドバイスします

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YRSでは受講生の走りを見ただけで何が足りないか、何が過ぎているかアドバイスします
写真はアンダーステアを出しながらコーナリングのKさん
※いつもはこんな走りではありません

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アドバイスを受けた受講生はやってはならないこと、やるべきことを区分けしながら速さを身につけます

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YRSドライビングワークアウトではコースに一度に入るのは4台まで
コース幅が14メートルもあるので安全に余裕をもって練習することができます

Kさんと『楽しかったねぇ』と話し込んでいたNさんだけど、ポルシェ乗りとしての自尊心に傷がつかなかったと言ったら嘘になるだろう。次に同じようなシチュエーションがあったら、今度はNさんにポルシェの特性を生かす走り方をアドバイスして、コーナリングの速いクルマを引き離すコツをアドバイスをしたいと思う。

クルマを上手く運転するには一つひとつの操作を自分のものにすることも大切だけど、同時にある場面で何をするべきかという答えを引き出しに溜め込むことも重要だ。

ユイレーシングスクールに来てくれた運転大好きの人達が、一日中心底運転に没頭しているのを目の当たりにするのは楽しいし、スクール終了後にお互いの進歩を披瀝しあっているのを小耳にはさむのは本当に嬉しい。ドライビングスクールをやってて良かったと思えるのは、幸せなことだ。


第149回 ローンチコントロール

ルーテシアRSのローンチコントロール。以前ルーテシアRSシャーシカップでスクールに来てくれたYさんに無理を言ってやらせてもらったことがある(Yさんはまだ試してなかったけど!)。ただ、その時は直線区間が短かったのでスロットルを控え目にして3速まで。美味しいところを味わうまでにはいかなかった。

オドメーターの数字が6000を超えたころから後学のために5速までベタ踏みで加速してみたいなぁと思っていたのだが、富士スピードウエイのレーシングコースで試す機会を得た。

舞台は全長1475mのストレート。トゥィンゴRSの時は、最終コーナー立ち上がりの登り勾配を無視して加速距離をかせぐためにずっと下がったところからスタートしたのだが、今回はローンチコントロールが正確に働くように路面がフラットになるところまで1コーナーよりに進んだところからスタートした。直線区間で加速と減速を終えるには不利になるけれど、ローンチコントロールを体感するのが目的だから。

で、当日は午後になると小雨が降ったりやんだりで路面はウエット。ところどころに水たまりもある。これ幸いとレースモードはまたの機会にして、機械まかせで、しかもウエット路面だとどんな走りをするのか、スポーツモードでの実力を見ることにした。

ローンチコントロールを作動させ、左足でブレーキペダルを踏んで、右足でスロットルペダルを全開にする。
左足をブレーキペダルから瞬間的に滑らせたら、後は右足を床まで踏み続ける。ただそれだけ。

その時の動画を編集してYouTubeにアップしたのがこれ▼。

ホイールスピンは起きるものの、ウエットだというのに想像していたよりはずっと少なく、しかもタイヤの空転が減ると、減った分だけ前に押し出される感じが強くなるような、タイヤが理想とする滑り率で路面をとらえた瞬間に最大加速度が発生するように、ローンチコントロールはそんな計算しつくされたような加速を、『運転手は何もしていないのに』実現してくれた。

すごい。すごいの一言。本来なら、ある程度熟練した人でなければできなかった種類の運転操作を、人間の代わりにクルマがやってくれる。

ルーテシアRSのオーナーはローンチコントロールを試してみるべきだ。現代の自動車技術が、どれほど人間の能力を補ってくれるレベルにまで進んでいるのかがわかる。クルマに対しても運転に対しても、新しい価値観と展望が生まれるはずだ。

ただし、時と場所をわきまえて安全第一で。クルマのおかげですばやい加速ができるようにはなるけれど、それに見合う減速ができるかどうかは確認していないと思うから。
それと、これは運転全般に言えることだけど、その速さがクルマの機能から生まれたものなのか、運転技術が生み出したものかの検証を忘れないようにしたい。そうでないと、クルマに対する畏怖の念が薄れ、本当の運転の楽しさを味わうことが難しくなるから。

ボクはと言えば、レースモードのローンチコントロールを試す前に、ドライ路面だとスポーツモードのローンチコントロールがどんな働きをするか感じてみたくなった。ルーテシアRSは楽しい。

協力:富士スピードウエイ


第147回 道具の使い方

2011年の初めに同じテーマで書いたのだが、その焼き直し。

以前はスクールの座学で包丁の話をかなりの頻度で話していた。なぜ包丁は引いて切るのか、という包丁という道具の使い方の話。
ところが、話していてもフーンといった感じであまり興味を示してくれないことが多かった。たかが包丁を使うのにそんなメンドクサイ話なんか要らないよ、と思っているのか、こちらの説明が悪くてピンとこないのか、座学より早く走りたいと思っているのかわからないけど、とにかく受けは良くなかった印象しか残っていない。

が、個人的には道具の使い方には大いに興味がある。どうすると道具を効率よく使うことができるか。クルマを運転する時にはいつもそんなことを考えている。正しい道具の使い方を知れば、道具を使っている時にどうすればどういう結果を期待できるか見えてくる。大事ことなのだけど、YRSの受講者でさえ、概して使いかたより使った結果のほうに興味があるように感じると言ったら怒られるか。

包丁は最も単純な機能を備える道具だから例にあげたまでで、実はクルマという道具の使い方に思いをはせてもらいたいとの願いがあった。

で、あまりにも反応がないので全長79センチの包丁を作った。もちろん木製だ。これを座学で見せれば少しは興味を持ってくれるかな、と期待した。

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全長79センチの包丁(のようなモノ)

結果は。見事に期待外れ。模型を目の前にしても、クルマの操作とは全く関係ないからか、興味を持ってくれている気配はなかった。
それ以降、あまり包丁の話はしていない。したほうがいいのだが、他にも使い方の大切さを伝える方法はあるから、79センチの包丁はガレージで惰眠をむさぼることに。

で、そう何回もあることではないので、その包丁らしきもおを紹介しておきたい。

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包丁を赤矢印の方向に動かすと

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切られるモノには緑矢印の向きに刃が当たる

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その断面を想像することができれば

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なぜ包丁は引きながら使うべきなのかがわかる

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大げさに作った包丁だからだけど、刃の角度の差はこれだけ異なる

実際の包丁の刃は薄い。それでも引くと引かないでは切れ味が違う。
クルマの運転でも、ごくわずかな操作の違いが、結果的には大きな差を生む場合が多い。

包丁のような単機能の道具でも使い方を理解すれば、より簡単に、より効率的に目的を達成することができる。クルマはもっともっと複雑な機械だから、使い方を覚えれば、より安全により快適に走らせることができる。サーキットを走るなら、リスクをとることなく速く走らせることができる。意のままにクルマを操ることにつながる。

最近は包丁の話の代わりに、「クルマの正しい動かし方を覚えておいて損はありません」と直球勝負をすることにしている。


第143回 ルーテシアRS 阿讃サーキットを駆ける

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ストレートに並んだルノー、ルノー、ルノー

ルノークラブ走行会が行なわれた阿讃サーキット。香川県との境に近い徳島県東みよし町の山の中にあるこの1周1004mの小さなサーキットは、運転の練習にはもってこい。

なにしろ高低差がハンパじゃない。加えて、これが最大の特長なのだが、エスケープゾーンがほとんどない。コースアウトしたら即ガードレールか土手。こういう環境は得がたい。

突っ込みすぎたらアウトに逃げればいいや、で練習するのと、絶対にコースを外れてはだめだ、で練習するのとでは全く違う。テクニック以前に覚悟の仕方を養える。

それに、エスケープゾーンのないタイトなコースが役に立つこともある。

この日、サーキットを初めて走る人が何人もいたけど、みんな最後にはそこそこ走れるようになった。それは、あくまでも個人的な感想だが、レイアウトというか、目に入ってくる情報が峠道を走っているのと大差ないので馴染みやすいのではないかと。

頂上から下るセクションもいい。とにかく忙しいから考えている時間はない。なんとかしなきゃならないし、やってみればなんとかなるものだ。運転の理想は無意識行動なのだから、それを短時間のうちに習得できる。

そんな阿讃サーキットを慣らし中のルーテシアRSで走った時の動画がこれ。オドメーターの数字は4000を少し超えたばかりだったから、RSボタンには触らずショートシフトをしながら走った。

阿讃サーキットを走るのに特別な資格は要らない。ライセンスも要らない。年会費3,500円を払えば、平日、土曜、祝日なら1,600円で25分走ることができる。関西圏にお住まいのルノーユーザーの方はぜひ一度訪ねてほしい。
ただ、サーキット自体が山の上にあって、そこへ続く道は細く急で、上に住む方々の生活道路でもあるので十分注意してほしい。

サーキットを単に速く走るのではなく、自分がクルマの性能を引き出す操作ができているか検証するのにはうってつけのコースだ。


第142回 ルノークラブ走行会

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全員集合

5月4日。阿讃サーキットでルノーネクストワン徳島とルノー松山が共催するルノークラブ走行会が開催された。

この走行会、20数年前にルノーユーザーの事故がきっかけになって始められたそうで、今回で30回目になるという。
「経験不足に起因する不慮の事故からお客様を守りたいので始めた」という一宮さんのお話を聞いて、何かお役に立てればと押しかけることにした。

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まずはルノーネクストワン徳島に表敬訪問

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予報は外れで日焼けが痛い

せっかくだから座学もやろう、という話になって、集合時間を例年の午後1時から朝10時半にしたのだけれど、座学を始める前にルノーユーザーとその仲間が26名集まった。

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どの顔も真剣そのもの

座学ではいつもの通り、タイヤのグリップの話に始って、運転操作でやってはいけないこととやっていいこと、やったほうがいいことを説明して、参加された方々の質問にもお応えした。

本州以外で初めてのスクールではあったけど、みなさん真剣に話を聞いてくれてとても嬉しかった。

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小さいサーキットだけど設備は万全

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最短距離でクルマを止めるコツを披露

昼食をはさんで、走行は1時から5時まで。走行時間をそぐといけないので、実技はスレッシュホールドブレーキングを体験してもらうことだけにした。全員をお乗せすることはできなかったが、ブレーキペダルの踏み方によって制動距離が大きく変わることははたから見ていてもわかったそうだ。

その後は好きな時に走って、好きな時に休むといういつものルノークラブ走行会。

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合間にコースを歩いて損得勘定の仕方を説明

サーキット走行のベテランから、この日初めてサーキットを走る方まで経験値はバラバラ。大丈夫なのかな、と思っていたけれど、心配する必要はなかった。みなさんご自分のペースを守ってサーキット走行を楽しまれていた。

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走行予定のない方はYRSルーテシアの助手席と後席から

何人かの方を助手席に乗せてオーナーのクルマで走って『理にかなった操作』というものを見てもらったけど、「目から鱗」と言ってくれた方もいたから参考にはなったはずだ。

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ビデオの撮影もしたし

かの一宮さんが0.9ターボのルーテシアを持ち込んでいたから、定員乗車で模範走行(?)を披露した。ちっちゃなエンジンなのに上り坂でも痛痒を感じなかったのは大きな驚き。

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0.9ターボが思いの外速いのに驚いたり

とにかく、コース上にクルマが走っていない時間がないほど、1周40秒台後半~50秒台前半のコースを入れ替わり立ち代わり走ること走ること。 「今日がサーキット初めてなんです」と言ってた方々が、目を三角にするでもなく周回を重ねる。それも初めてにしては大したペースで。 ちょっともったいないところがあったのでアドバイスしたら、その方はベストラップを更新。 カングーも走っていたから速度差は大きかったけど、譲るところは譲り、譲られるまでは待つという秩序あふれる、それでいて楽しさ満点の時間が5時まで続いた。

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定員乗車のカングーが走っていたり

一宮さんも出て行ったら戻ってこないほど運転が好き。なんか、とてもステキな走行会でした。帰りの渋滞が少しばかり苦痛だったけど、それを差し引いても余りある得がたい体験をさせてもらいました。
自宅に戻り、四国が近くなったように感じています。

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見たことのない色のメガーヌRSが走っていたり

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一宮さん お世話になりました。
ルノークラブ走行会 ずっと続けて下さい。

※掲載した写真はYRS卒業生の和田康之とルノーネクストワン徳島に提供してもらいました。