陸上を最も速く駆ける生物であるチーターの速さは100キロ/時だと言われているが、個体によっては120キロ/時が可能らしいから驚きしかない。高速道路を走るクルマと同等の速さ。その速さで草原を駆ける時、チーターがどこを見て何を見てどんな情報を得て、身体はどう反応しているのだろうか。足の裏はどうなっているのか。痛くはないのか。どうやって筋力を地面に伝えているのか。捕食のため本能のままに走っているのだろうけど、生き物としては驚異的な、その速さを生み出す決定的なメカニズムを知りたいものだ。
陸上を最も速く走った人類がウサイン・ボルトであることに異論はないだろう。2009年8月16日の100m走で記録した9.58秒は平均時速にすると37.58キロ/時になるけれど、65m地点で44.17キロ/時の最高速度に達していたという記述もある。ふつうに自転車をこいでいる時の速さが15キロ/時だと言うからその3倍だ。
人間が時速45キロで疾走している時に何が起きているのか。意識は、身体は、筋肉はどうなっているのか。同じ人間なのに全く想像できないのが残念だ。そして、この記録は果たして破られるのだろうか。おそらく人間の速さの限界。
一般的な人間の場合はどうか。 ってボクの場合は、小学校に上がる前から眼鏡をかけていたし、低学年では医者の指示で運動が制限されていたから今もって運動オンチ。自慢にはならないけど、跳び箱も飛んだことがないし逆上がりもしたことがない。100mって言われても走り切れるかどうかってレベルだろうし歳だから、とりあえず40秒ならなんとか。とするとその速さは9キロ/時。まぁ、要するにそれがボクの速さに対する限界で、それ以下であれば安全によどみなく快適な生活が送れるということになるのだろう。それ以上は『危うい世界』になるのだろうね。
だからと言うわけではないけれど、スクールの座学でこんなことを話すことがある。
「人間の速さには限界があると思っています。クルマを運転するということはその限界を敢えて越える行為です。言わば未知の領域、何が起きるか予断を許さない世界に踏み入るわけですから、慎重の上にも慎重になる必要があります。一方で限界を越えることが高揚感を誘い、思いもよらない衝動にかられることがあるのでいましめが必要になる時があります。クルマを動かすということはクルマとの共同作業です。クルマの力を借りて人間ではとうてい及ばない速さで移動するのですから、人間が主役では決してありません。人間ができることはクルマを目的に応じてキチンと動かすことだけです。クルマを思い通りに動かすためには、運転中の状況や情報を取り込み、的確な判断を下し、理にかなった操作をすることが必要です。座学でお話しすることは、その全てのたたき台になるものです」。
「クルマはよくできた道具ですから操作したことがそのまま正確に挙動として現れます。オーバルコースで加速減速旋回を繰り返しながら徐々にペースを上げていきます。自分が思った通りにクルマが動いてくれない瞬間があれば、その手前でクルマが求めていない操作をしたことになります。慣れるまでは操作の開始を手前から、操作の終わりを奥にして、クルマの挙動を穏やかにするように探りながら操作してみて下さい。上手くやろうとする必要はありません。身体の力を抜いてまずクルマの動きを感じて下さい。操作と挙動の因果関係が見えてきます」。
ユイレーシングスクールは速く走る方法を教えているけれど速さが危ういものであってはならないし、秩序なく速く走ることを奨励するものでもない。クルマは速く走らせると操作が正しいか間違っているかはっきりと挙動に表れる。安全な場所でいつもより速く走ってもらうことで、操作と挙動の因果関係の例をできるだけたくさん経験してもらい、クルマを思い通りに動かすために必要な操作とやってはならない操作の仕分けをしてもらうことがスクールの目的だ。
思い通りにクルマを動かすのには、まずクルマが人間の手で瞬間瞬間にどう動いているかを感じてもらうことが必要になる。クルマの運転は定点観測ですむテレビゲームと異なり、自分が移動しながら操作をしなければならない。どうしても味覚以外の五感をフル動員し、六感の助けも借りて、自分が抱くイメージとクルマの動きを一致させる努力を絶え間なく続ける必要がある。それができればクルマは人間ひとりでは及びもしない世界を見せてくれる。
クルマはと言えば、 2019年4月22日のブログ 第367回 メガーヌRS加速 では209キロ/時の最高速度と0.581Gの加速度とマイナス-0.973Gのマイナス加速度を経験させてくれた。 2020年12月4日のブログ 第539回 腰で曲がる では1.35Gの横向き加速度を体験させてくれた。 『クルマは人間能力拡大器』 とユイレーシングスクールが唱えるゆえんだ。クルマを動かすという意識が明確で理にかなった操作ができさえすれば、身体能力や年齢に関係なく、クルマは自分の限界を越えた世界を見せてくれる。
そして。クルマの速さと言えばF1を外せない。F1からも学ぶことはある。あの速さは自分とは無縁の世界ではあるけれど、速さよりもコクピットの中でドライバーがどこを見て何を見て何を感じ、身体がどう反応しているのか想像するのは意味がある。あの速さなら判断を下す間はないはずで、無意識行動、つまり本能で運転しているのに違いない。いったいどんな思考をしてどんな身体能力をしているのか、肺活量は大きいのか握力はどうなのか、視力は等々。強烈な加速度に翻弄されないで操作するのにはコツがあるのか。同じ人間なのに、と思う。近づくことなどできないけれど、あの領域を目指したいとは思う。100mランナーがウサイン・ボルトの走りに思いを馳せるのはこういうことか。 クルマという乗り物が人間にもたらしてくれるものはとてつもなく大きい。

あるサーキットで行われたF1レースQ1での車載映像
左コーナーを7速全開時速254Kmで回っている時
横向き加速度は4.4Gを示している
コーナリング中のフルスロットルなのにアンダーステアが出ていない
サスペンションのメカニカルグリップとタイヤのグリップ
そして巨大なダウンフォースのなせる業か

あるサーキットで行われたF1レース中Q1の車載映像
300キロプラスからのフルブレーキング
2速に落とす過程で5.2Gのマイナス加速度を発生している
近年のF1ではフルブレーキング時の150Kg以上の踏力が必要だと聞いた
狭いコクピットでそんな力をひねり出し
しかもタイヤのロックもさせないコントロールをするドライバーはまさに超人

あるサーキットで行われたF1レース中Q1の車載映像
ストップ&ゴーのサーキットゆえ高速コーナーがなく
このサーキットでのコーナリング中の最大横Gは5G未満
それでもF1は速いしそれを操る人間の限界は高い
右コーナーの出口付近の瞬間は6速全開で時速218Km
わずかだがアンダーステアによる減速Gが発生している
最高速度ではF1より速いクルマがあるけど、複合的に高い機能を有し、決められた条件の中での速さに限れば地上で最速なのはF1マシン。それを操るのが人類最速のF1パイロット。その営みを想像する価値は十分にある。
静止画は © フジテレビNEXT

一般社団法人高齢者安全運転診断センターの
高齢者安全運転診断サービス
その 概要はこちら
※高安診の回し者ではありません為念
※画像は高安診から拝借
過去にブラッシュアップ講習(392回、393回、394回、395回に掲載)と、Objet講習(507回、508回、509回に掲載:リンクは全て新しいウインドウに)とふたつの安全運転講習を受講した。どちらも定められた道順をふだんと同じように運転した結果の評価だったけれど、今回受けた高齢者安全運転診断サービスは日常の運転を録画して、それを元に診断が下されるのでより実際の運転の癖なり習慣なり性格が浮き彫りになるかなと。 自分の運転が心配な人なら何歳でも受けられるそうだ。不安がなくても運転に自信満々であっても、自分の運転を他人が見るとどう評価するか受けてみる価値はあると思う。
閑話休題。世の中、『高齢者の運転は危ないよ』のイメージ作りが盛んだけど、それは当を得ているようで得ていない。高齢者になれば、確かに身体的に衰えるだろうし注意力が散漫になるかも知れないし、いっそう我が儘にもなる。けれど、だから運転も危なくなるのだ、と断じるのはいささか乱暴だ。
ボクは、 危ない運転をする高齢者は、歳をとったから運転がおぼつかなくなって危ない運転をするようになったのではなく、元々その人には危ない運転をする素地があったけれど歳をとるまでそれが結果として表れなかっただけ にすぎないと思っている。
運転というものは人間の習性に大きく左右されるものだと思っている。こと安全に関して、若い頃は自分の横着な運転や自分本位の運転を許していた人や運転をなめていた人とそうでない人の差が表れにくかったかも知れないけど、その差が何10年も積み重なれば潜在的に運転の危ない人とそうでない人の運転力の開きは限りなく大きくなる。高齢になって事故を起こす人はがいして、若い頃から運転を軽んじきたのではないかと思っている。持論だけど。
クルマの進化はおせっかい技術の裏返しと言ったら言い過ぎかも知れないけど、クルマが手軽に、楽に運転できるようになったからと言って、クルマは気軽に運転したり何げなく運転したり、行き当たりばったりで運転してもかまわない種類の道具ではないと主張したい。
朝起きてお茶を飲むために電気ポットのスイッチを入れたり洗濯するのに洗濯機の設定をしたり、帰宅して冷たいビールを飲むために冷蔵庫を開けたり。そんな家電製品を扱うのと同じ日常的感覚でクルマを動かしているならば、それは結果的、将来的な危うさを育てていることにつながるはずだ。
高齢者の仲間に入りつつある身としては、これからも高齢者の運転が本当に危ないのかというテーマに注目していきたいと思う。同時に、もっとたくさんの高齢者(昨年の最高齢受講者が78歳)にユイレーシングスクールを受講してほしいと思うし、来週のYRSオーバルスクールには22歳の娘さんと一緒に受講する常連組がいるように、老若男女、たくさんの人に運転の何たるかを探るためにユイレーシングスクールを活用してもらると嬉しいのだが。
・2月20日(土)開催 YRSオーバルスクールFSW開催案内へのリンク
・2月21日(日)開催 YRSオーバルスクールFSWロンガー開催案内へのリンク
送られてきた診断結果の最後は診断映像。7分30秒ほどのDVDには前回触れた安全運転診断書で指摘された5項目について映像が収録されていた。

一旦停止の標識のある交差点で完全に止まらなかったとの指摘
同じシーンが2度出て来て2回目は解説付き(音声はなし)
しかも一旦停止の標識を赤枠で囲むという念のいれよう
止まらなかったとなってるけど停止しなかったのではなく
停止している時間が短かったと言ってほしかった
車速は瞬間的にだけどゼロになっているのだから

湖西道路が2車線が1車線になる坂本付近で後続車もいなかったから
時間をかけて車線を変更したらもっとすみやかに車線変更をとの指摘
車線の区分線(赤線で強調された)をまたいで走るのはやまめしょうとの指摘
走行車線を走っていて
車線の左側の白線と等間隔で走っていただけなのだけど
走行車線が追い越し車線に収束する距離がかなり長く結果的にそうなったんだけど

湖西道路に合流して車線変更をした時に
ミラーだけでなく目視確認を行いましょうとの指摘
目視確認が必要な場合はもちろんそうするけど
目線の持って行き方やミラーを確認するタイミングによっては
正面を見ていても周囲の状況を把握することはできる
できるだけ進む方向の景色の中に入っていきながら同時に周囲の気配を確認したい

このDVDはいいかも
安全運転診断書の文言で指摘されて『そうだったかなぁ』だったのが
映像を見せつけられると『そうでした』になる
手がかかっていて創るほうは大変だろうけどよりいっそう自分の運転を俯瞰できる
安全に配慮した運転は人それぞれだろうけど
やはりある程度の緊張感を持って運転に集中することが安全につながると思う
それにしても
けっこうせっかちな運転をする自分がいて嫌悪感を感じた(‼)のが最大の収穫かな

送られてきた診断結果のふたつ目は安全運転診断書
前回の自己診断はあくまでも自主申告に対する評価だったけど
安全運転診断書はドライブレコーダーに記録されたクルマの動きを検証しての判断になる
記録された運転は高安診の基準からすると望ましくない動きが散見されたようで
結果的にずいぶんと辛口の評価をされてしまったけどそれはそれで意味があった
自分では安全に十二分に配慮して運転しているつもりだけれど
自分の安全意識が果たしてどういったものなのか知りたかったこともある
クルマの運転はそれ自体が危険をはらんでいるわけだけど
長年の癖もあるだろうし性格も影響するだろう
人によって安全に対する認識も違えば安全だとする操作の仕方も異なる
ここはじっくりと 『少しせっかち』 と行間に読めそうな診断書を読み込んでみようと思う




まずは自己診断OD式安全性テストの結果から。

40問の設問にYESかNOで答えたのだけど
結局それが8つの項目に分類されていて項目ごとの点数に反映されていた
項目は情緒不安定性 衝迫性/暴発性 自己中心性 神経質/過敏性 虚飾性
決断力 判断力 安全態度の8つ
正解とされる答えを選ぶと1点
それにウエイトと呼ばれる係数をかけたものが換算点でその合計が総合得点
5点満点だった項目がふたつあったけれど
2点しかとれなかった項目があって換算された総合得点は72点でBランク
2点だった項目は自己中心性。2~0点が低評価とある。項目別評価には「自己中心性の評価が低い人は、周囲の交通状況を考えず、自分勝手な考え方や運転行動をとる傾向があります。身勝手な行動や考えが他者に迷惑をかけ、それが引き金になって大事故を起こしてしまうことがあります」との指摘あり。
で、続いて低評価者向けには以下のようなアドバイスが載っていた。
・周囲の車や歩行者、二輪車への配慮を忘れないようにしましょう
・道路は自分だけのものではないということを肝に命じさせましょう
・交通社会の一員であることを認識し、周囲に迷惑をかけない運転を心がけましょう
でも、これって自己中心性の高い人だけに向けられるアドバイスではないよね。8項目の冒頭に優先して記載したほうがいいと思うけど。
交通の流れを乱さない範囲で周囲のペースに惑わされず自分のペースを維持して走ることが自分にも周囲にも安全だと思うから、その意味では自己中心的な運転だということになるかも知れないけれど。今までに他人にブレーキを踏ませるような運転をしたことはないし、他人の犠牲の上で自分が有利になったこともないしなろうとも思わないし、旧来の常識と言われてきたことを自分の都合や気分で曲げることなど考えたことはないし、行き当たりばったりの運転はしないし、できるだけ同じ作法で運転することを心がけている。
大局的に交通の安全かつ円滑な流れを常に意識して、 こと運転に関しては自分本位の思考と行動を慎むのがヨシダ流。
第547回で紹介した 高齢者安全運転診断サービス 。90分走ってドライブレコーダーに記録して、なんか棘のある問診票に記入して送り返した。

運転適性検査という問診票
自己診断OD式安全性テストと呼ぶらしい
ついつい良い子ぶりたくなるような質問が40
「あまり深く考えると
判断できなくなる場合がありますので素直な気持ちでお答え下さい」とある
素直な気持ちってなんだ
自分を俯瞰するためだと言い聞かせてありのままに

説明書に従ってフロントウインドウ右上に取り付けて
後ろ向きのカメラが気になって気取ってしまったり(笑)

高速道路だと流れがいち方向だし単調だから少なめにして
様々な場面に出会うだろう市街地を中心に数日かけて2時間弱運転
90分走行して下さいとあったけど
90分以上はオーバーライトされるそうだから十分
2週間もしないうちに診断書1通、診断映像1枚、運転適性検査結果1部が届いた(なぜか CAUTION録画中 のマグネットが入っていた)。


果たして結果は ⁇ 続きは続編で

ある日
ユイレーシングスクールの教科書 を紹介したいと電話があった
聞けばラジコンに関するブログを書かれている方で
操り方に共通するものがあるからブログで紹介したいとのこと
メールでやり取りしてブログを見せてもらって納得
もちろん快諾
テールエンダーさんのブログ はこちらです
言い方は古いかも知れないけれど、同じ『四ツ輪』を動かす仲間。参考になればこの上なく幸い。
”地域高齢者の運転事故ゼロ”を目指して
「本気の運転診断」してみませんか
のキャッチが目に止まり、高齢者安全運転診断サービスに申込んでみた。運転に関しては高齢者だという自覚は 全く ないけれども。

メールで申し込むと
折り返しに受講料振り込みの案内が来るから
税込み33,000円を払うと
宅配便で写真の一式が送られてくる
前後を撮影できるドライブレコーダーと二股のシガーソケットアダプター
取り付け用の小物

なんと問診票が入っていた
自分で自分の運転を診断するためのものらしい
ちらっと見たら挑戦的な質問が
実はまだ答えてないけど

同梱されていたドライブレコーダー取り付けマニュアルで取り付けは難しくない
機器が貸与されるのは2週間まで
その間に90分以上走行したドライブレコーダー一式を返却すると
後日診断の結果が送られてくるという寸法
今週のスクールが終わったら送り返して診断を待つ
果たして結果やいかに !!!
ユイレーシングスクール22年目の始動を前に虚心坦懐。
過去にYRSオーバルスクールに参加してくれたYさんとのやりとりを載せるのを承諾してもらって。 Yさんはクルマの運転を全開で楽しみ中。




赤い矢印に注目です
ありがたいことに、ユイレーシングスクールは参加してくれた方々とともに成長しています。今までも、そしてこれからも。

メガーヌRSトロフィーの性能を目いっぱい引き出しているかと言うと
まだまだそうではないし
もっといけると思ってはいるけれど
改めて8月にビデオ撮影のために
YRSオーバルFSWロンガーを左回りで4周走った時のデータから

パフォーマンスボックスで拾ったデータで青線が速度(左目盛)で緑線が横G(右目盛)
1G以上の横Gを発生していた時間の最も長かったのが4.1秒
途中1.462Gのスパイクがあったが4コントロールによるものなのだろうか
波形に落ち着きがないのはヨー変化が連続しているからだと考えられる

同じく青線が速度(左目盛)で赤線がプラスマイナスの加速G(右目盛)
下り勾配の下のコーナーで前荷重でターンインをしたくないから
ある周はコンマ1秒以下の速さでマイナス0.66Gのブレーキングの後リリース
薄いトレイルブレーキングだから舵角が増えても減速Gは減少傾向にある

昔の人間としてはクルマをこじることにどうしても抵抗がある
4コントロールの機能は確認済みだし
スロットルを開けすぎた時の挙動を確かめたい気持ちは十分にあるのだけど
タイヤのショルダーから生えている糸を削りたくないという意識があるのだろうね
身体が自然に動いてスロットルを思い切って開けるのを躊躇してしまう自分がいる
もっとも4秒も1G以上の横Gが続くのは4コントロールのたまものなのは間違いなく
次の機会にはもう少し踏み込んでみようと思うのだが果たして